[No.085: 嘔吐の際に出血する「マロリー・ワイス症候群」]
お酒を飲み過ぎて気持ち悪くなって吐いたら、真っ赤な血が出た・・・
こんな症状を経験したら、どんな大病かと思ってしまいます。
「マロリー・ワイス症候群」という、胃の粘膜の下の血管が切れて出血する病気があります。暴飲暴食が原因で、嘔吐する際にかかる激しい胃の内圧で、食道と胃の境目あたりの粘膜が縦に切り裂かれて大量に出血するのです。嘔吐した後にみぞおち付近に強い痛みが走ることもあります。また、翌日に血液の混じったコールタール状の真っ黒な便が出ることもあります。
裂傷が起きるほどの圧力というと不思議に思いますが、嘔吐をすることは、一度食べた物を逆流させるため、胃の粘膜に相当な力が加わるのです。嘔吐以外でも、腹部の打撲や咳、しゃっくり、排便などの力みなどの強い圧力で、出血することはありますが、圧倒的に多いのが酔っぱらって嘔吐する場合です。
マロリー・ワイス症候群が怖いのは、誰でも起こりうること。胃が悪くなくても、暴飲暴食をしたり、飲み過ぎて吐く回数が多いと発症します。特に、2度以上吐くと起きやすいのです。最初の嘔吐で裂傷ができ、その血が胃にたまり、2度目以降の嘔吐で、血を吐くことに。
もし嘔吐して血が混じったり出血したりした時には、救急車で病院に行ったほうがいいでしょう。そのままにしておくと、出血多量で命を落とす恐れがあります。
病院ではすぐに内視鏡で胃と食道の内部を検査します。傷が小さいと自然に止血する場合もありますが、裂傷がひどいと粘膜の裂け目をクリップしたり、エタノールを注入して止血します。
入院すると、粘膜の裂け目が治るまで一週間くらいで退院となります。退院後も1〜2週間は胃酸分泌を抑え、胃の粘膜を保護する薬を服用することになります。多くは抗潰瘍剤やH2ブロッカー、粘膜保護剤などが処方され、外来治療で対応できます。
予防策は、暴飲暴食を控え、吐くまで飲まないこと。また、アルコール濃度の強いお酒で起きやすいため、ウイスキーなどをストレートで飲むようなことは避けたほうがいいでしょう。
12月に入り忘年会シーズンになり、飲み会が増えるにつれて、マロリー・ワ
イス症候群を起こす人も増えますので、十分に気をつけて下さい。
---2001.12.1 (c) 2001 by Mica Okamoto ---
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