最近、お米を食べる人が減っている。その代わりに増えているのがパン。駅
前のオープンベーカリーには昼頃になると人が並んでいるし、コンビニのパン
を昼食やおやつに毎日食べている人もたくさんいる。
手軽でダイエットにもよさそうとパンの人気は高い。でも、パンは消化が早
いので、すぐにお腹がすいてしまい、また何かを食べるはめになる。パン生地
にはバターや塩分も結構入っているし、デニッシュやサンドウィッチには砂糖
やマヨネーズなどが使われていて、けっこうカロリーが多い。結果的には、ご
飯よりパンのほうが太りやすいといわれている。
パンの中身についてはあまり知られていない。
パンは、小麦粉に含まれるグルテンというたんぱく質と酵母の働きでふっく
らと柔らかくできる。酵母には「天然酵母」と「人工酵母=イースト」があり、
市販のパンのほとんどに使われているのは、廃糖蜜にリン酸や窒素などの化学
物質を加えて工業的に生産された「イースト」のほう。天然酵母もイーストも
酵母菌に栄養を与えて、増殖・成長をさせるエサである「培養基」がないと発
酵しない。つまり、酵母はエサを食べて働き、炭酸ガスを出すので、ふっくら
したパンができあがる。
天然酵母の場合、小麦粉自身が培養基だが、気温や湿度で発酵の度合いが違
うため、おいしいパンをつくるには技術を要する。発酵がうまくいかないと、
酸っぱくなったり、硬くなったりするので、熟練した人間の微妙な調整が必要
になり、時間も手間もかかってしまう。それに、天然酵母の値段はイーストの
20倍。どうしてもパンの値段は高めになる。でも、食べると歯ごたえがあって、
味にもコクがあっておいしいので、ついついこちらを選んでしまう。
一方、イーストフードとはその名のとおり、イーストが食べるエサで、塩化
アンモニウム、炭酸カルシウム、リン酸塩など13品目の合成添加物から4〜5
品目を混ぜてつくられる化学物質。塩化アンモニウムは毒性が強く、大量に食
べると吐き気や嘔吐などを起こす可能性があるといわれている。
なぜイースト+イーストフードなのかというと、短時間で大量のパンを発酵
させることができるため、少ない原料でもフワフワしたパンを一度にたくさん
作れる。同じサイズの天然酵母とイーストフードのパンの重さを測ると相当な
違いが出る。それだけイーストフードのパンは空気が多いということなのだ。
それに化学物質なので発酵の度合いの予測ができるため、機械で製造するのに
品質や時間などが管理しやすく、均質なパンを大量生産しやすい。
パンのできる工程を知ってしまうと、食べ物というより工業製品というイメ
ージが強くなってしまう。パン製造のバイトの経験者の裏話だと、材料をまぜ
るときに添加物をドサドサ入れるらしく、体力も必要で長続きしないらしい。
パンの材料の安全性を考えると、イーストフードのほかにも、乳化剤や香料、
小麦粉の残留農薬の問題もある。健康に害のありそうなものがてんこもりの市
販のパン。異物混入で大騒ぎするけれど、虫のほうが取り除けるだけ安全かも
しれない。
---2000.10.30 (c) 2000 by Mica Okamoto ---
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